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新米、介護者奮闘記「“オカン”ジャストフィット⁉シューズを探せ!」【後編】

試着に次ぐ試着

 最近、腰の重たい母も「ひょっとしたら自分に合った靴が見つかるかもしれない?」という期待があるのか珍しく乗り気で、逆に自分は責任重大、少しプレッシャーを感じました。

 博多駅の地下駐車場に車を止め、母をサポートしながら案内板を頼りに何とか展示直売所へたどり着くことができ、早速、説明員さんに状況を説明し母の足の測定表を見ていただきました。

「母の足は、足長に比べて足幅と足囲が細すぎるのですが、大丈夫でしょうか?」と半信半疑な様子で伺ったところ

「大丈夫だと思います。靴の種類はひも靴に限定されるかもしれませんが、お母さまの足幅と足囲でしたら、ひもで、十分、調節可能です。」

「ひもで縛りつけた場合、履きやすさや脱ぎやすさが損なわれませんか?」と疑問を感じましたが

「ご安心ください。私共のひも靴にはすべてファスナーを付けておりますので、靴の履きやすさ脱ぎやすさという点でも、しっかり配慮できています。」と説明員さんからお聞きして一安心

「わかりました。では試着をお願いしたいのですが、その前にご相談があります。」

「はい、何なりと。」

「母の第一希望はこの赤いレインブーツなのですが、ひも靴ではないですし、雨の日に出かけるのも心配なのでレインブーツの試着は結構です。」と言うと、説明員さんは

「息子さんのご心配の向きは良く分かりますが、あまり決めつけない方が良いと思いますよ。    まずは、お母様ご希望のレインブーツも含めて、いろいろな靴を試着させてあげましょう。      靴の履き心地や履きやすさ脱ぎやすさは、絶対に履いてみないと分かりませんし、また、ご本人でないとわかりません。そこは私がとことんお母様にお付き合いをさせて頂きます。             その上で、お母様とお話しになって、本当に納得できるものがあれば、ご購入いただければ結構です。もしなければその時は、遠慮なく他のメーカーさんをお試しになってみてください。」

「そうですよね。本人の知らないところで、勝手に決めつけては駄目ですね。お恥ずかしい限りです。ではお手数おかけしますが母の試着よろしくお願いします。」

ということで、敢えて第一希望のレインブーツから始まり、数えきれないくらいの母の試着リクエストに本当に辛抱強く対応をしてくださいました。

レインブーツは履きにくさとフィット感のなさで早々に選択肢から外れて、いろいろ試着する中で最終的に残ったのが防水仕様のひも靴(インナーの防水シートが足を覆っている)と普通のスニーカータイプ(もちろんひも靴)だったのですが、この2足に共通していたのが履いた時の軽量感でした。母曰く

「この靴、軽いわ!こんな軽い靴を履いたこと無い。それに履き心地がええね。生まれて初めて自分の足にあった靴を履いたわ。」と喜んでいます。それにフィット感も良さそうです。

「母はしきりに“軽い”と言っていますが、特別に軽量化されているのですか?」と説明員さんにお聞きすると

「いいえ、重さの程度は他の靴と大して変わりありません。重量よりもむしろフィット感を重視した素材・形状になっております。ですから、お母様が“軽い”とおっしゃっているのは、それだけご自身の足に合っているという証拠ではないでしょうか。」

 なるほど!ついに「“オカン”ジャストフィットシューズ」に出会えた!と自分も一緒に喜んでいました。「オカン、ええ靴が見つかってホンマに良かったな。」

しかしこの後、実はもう「ひとヤマ」あったのです。

防水仕様 VS スニーカータイプ

「そろそろ、決めようか?」と母に投げかけて、ふと足元をみていると、いつの間にか、また防水仕様を履いていて「私はこれに決めた!これを履いて帰る。」と言わんばかりの表情です。

「普段、使うことを考えたら普通のスニーカータイプがええんやない?」と母にすすめると

「雨の日はどないするの?水が浸みてくるのはいややで。」と嫌な予感通りの答えが返ってきて

「どっちかに決めろと言うんやったら、防水仕様がええ。晴れた日も兼用できるしな。」と一歩も引かない様子です。

 そもそも雨の日に外出すること自体、リスクが大きくてやめて欲しかったのですが、それを言ってしまうと、へそを曲げて元も子もなくなりかねません。こうなったら、最後の手段で

「それやったら、両方買うか。」と言うと母は

「えっ!これ結構高いで、あんたホンマにええんか?大丈夫か?」と気を使ってくれていたのか?少しばかにしていたのか?微妙なところでしたが、もう後へは引けませんので

「ええよ、その代わり誕生日と敬老の日の兼用やで。」と返事をしました・・・

しかし、答えてから、耳の聞こえの悪い母相手に大声でやり取りしていたことに気付き非常に恥ずかしかったですが、もう後の祭りです。これを聞いていた説明員さんも苦笑しながら最後に

「お母様、これは防水仕様ではありますけれども、小さな水たまりやほんの小雨を想定した防水です。ですから本降りの雨だとどうしても水は浸みてきます。決して防水を過信されないようにしてくださいね。無理をして、あまり息子さんに心配を掛けないように私からもお願いです。」と助け船を出してくださって、その場を収めることができました。

 結局、2足購入したわけですが、博多からの帰りは防水仕様のものから、ちゃっかりスニーカータイプに履き替えていていまして(その日は晴天)、その様子から察すると、どちらのタイプも満足してもらえた様子で、色々あったけれど、まあ良かったかな?と思います。

その後

「“オカン”ジャストフィットシューズ」のお陰で、歩くのが苦にならないのか、外出の範囲はかなり広がっているようです。このまま出来る限り健康でいてくれれば良いなと思うのですが、反面、転倒や事故によるケガのリスクあるいは熱中症などの病気のリスクが常について纏うことも事実で、そこはすこし覚悟しないといけないところです。

 この数カ月、母の歩く姿を見ていると、“ずっと元気でいたい!”という非常に強い意思のようなものを感じます。最近、母の面倒見(介護には程遠い)で大切なことは何だろう?とよく考えるのですが、まずは「本人の意思や意欲を尊重してあげる」こと、次に「そのことで発生するかもしれないリスクは、しっかり受け止める覚悟をもつ」ことではないか?と思うようになりました。

 ただ、そんな偉そうなことを言っても実際は中々できていませんので、これから何かこと有る毎に、今の気持ちを大切に、思い起こすようにしてゆこうと考えています。

「“オカン”ジャストフィットシューズ」捜索を通じて

 私はたまたま介護実習普及センターに勤めておりましたので、運よく介護シューズに関して相談にのってもらえましたし、販売店の紹介を受けることも出来ました。しかし、ここに勤務していなかったら、「“オカン”ジャストフィットシューズ」に出会えたかどうかは甚だ疑問です。

 そう考えると、ひとりでも多くの方に介護実習普及センター「福祉用具展示場」の存在を知っていただきたいと思い立ち、つたない私の体験談で恐縮ですが今回ブログ掲載をさせていただきました。

 少しでも興味をお持ちいただけたなら、当センターにお立ち寄りになって3階の福祉用具展示場を是非、実際にご覧になっていただきたいと存じます。

 また、今月末の9月30日(土)には当センターのある福岡市市民福祉プラザにおいて、年に一度の介護の催し「福岡市介護実習普及センターフェスタ」を開催いたします。お気軽にご参加くださいませ。