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新米、介護者 奮闘記 【近況のご報告】

久しぶりの投稿

 昨年の秋、「“オカン”ジャストフィット⁉シューズを探せ!」というタイトルでブログを投稿させていただいたのですが、最近「お母様は元気にしておられますか?」とか「続編をUPしないのですか?」といったお声を頂戴することが多くなってきました。

 この一年を振り返ると“事件”というほど大げさなものではありませんが、やはり色々ありましたので、その後の経過も含めてブログにて近況報告させていただきます。

 また、母については無事94歳の誕生日を迎え、なんだかんだ言いながらも元気に暮らしております。まずは、ご報告しておきたいと思います。

★★ 昨年9月のブログはこちら

     新米、介護者 奮闘記 【前編】 / 【後編】

母のケガ

 昨年10月中旬のことになりますが、買い物で外出中、お店の玄関で転倒して身体を地面に強打したらしく、病院に運ばれたと連絡がありました。お店の方が適切に対処をしてくださいましたので、私が駆け付けた時はすでに病院で応急処置と検査を終え、結果待ちの状態で少し落ち着いた感じになっていました(三角巾で右腕を吊り下げ、痛々しい姿ではありましたが…)。

幸い打撲は頭ではなく右ひじだったので「命に別状なし」と聞き一安心したのものの、すぐにどうして?という疑惑の念が沸き上がってきました。転倒の原因をきつく問い詰めるつもりはなかったのですが、表情に(# ゚Д゚)が表れていたのでしょう、母の口をついて出るのは

 「お店の玄関から外に出たとき、急に突風がきて体がフワッとして気が付いたらこけてたんや。ホンマに怖いわ!」と要領を得ないことばかりです。これ以上突っ込んでも埒があかないと感じて、まずはドクターの説明に集中してしっかりとお聞きしようと気持ちを切り替えましたが、この日は午後、夕立があったので、本当のところは足元を滑らせたのだろうと思います。

 肝心の検査結果ですが、やはり骨折で、本来は手術したほうがいいけれど、麻酔や年齢のこともあるので、精密検査の結果と経過をみて明日、決めましょうということになり、ここでようやく一旦帰宅となりました。

 「この腕の吊り下げ何とかならへんか?肩、凝ってしゃぁないわ。」とか「手術か?まあしゃぁないけど、入院は勘弁してほしいな。病院のごはんは美味しない。」と車の中でひとしきり悪態をついたあと家に戻ったら戻ったで、「ビールでも飲まんとやっとれん!」といって冷蔵庫から冷えた缶ビールを取り出し「このビールの栓、硬すぎて開かへんがな、どないなっとんねん?ちょっと開けてんか!」と叫んでビールに八つ当たりしている始末です。

 「やけ酒飲みたいのはこっちじゃ。オカンの転倒の原因が何なのか?オレが聞きたいわ!ホンマに」と心の中で思いっきり叫んだ後「でもまあ、骨折したのに、これだけ我儘言えるというのは元気な証拠か?」と自分に言い聞かせながら就寝しました。

手術&入院 

 翌日「この歳で本当に外科手術なんて出来るのかな?それに入院になったら嫌がるのは目に見えているし、どうやって説得したらいいのだろう?」と不安を覚えながら再び病院へ向かいました。

診察室に呼ばれて入室すると、ベテランで優しそうな男性ドクターが座っておられて、一通り触診、問診を終え、レントゲン写真で患部の状況と対処としては手術が最適である旨説明を受けた後

 「手術自体は難しいものではありませんので、ご高齢の方でも心配ありません。ただ、全身麻酔になりますし、年齢も考えると入院期間は術後のケアも含めておよそ2週間程度は必要になると思われます。」

 「母の年齢で本当に外科手術に耐えられるのですか?」とお聞きすると

 「もちろん医学的に充分な裏付けがあっての事ですが、それ以上に私が感心したのはお母様の立ち姿です。90歳を超えてこれだけ背筋をピンと伸ばして直立できる方は滅多にいらっしゃいません。素晴らしい姿勢です。自信をお持ちになってください。」と言ってくださいました。

 母の姿勢をこれだけ褒めてもらえると悪い気はしませんし非常に安心します。それ以上に母自身が気を良くして「手術を受けて、頑張って治します。」と二つ返事で手術を受け入れてくれたことで、ほっとしました。流石ドクター!いいとこ衝いてきますよね。

長期リハビリに突入

 入院後すぐに手術を行い、およそ2週間で無事退院できたのですが、その後に長期間のリハビリが待ち構えていました。退院時にドクターからお話があって

 「お母様よく頑張りましたね。手術も上手くゆきましたし、術後の経過も問題ありません。右ひじの腫れも徐々に治まってゆきますので、今後は整形外科に通院してリハビリを行ってください。目安は週2回を半年間程と長丁場になりすますが、大切な事ですので根気強く頑張って継続してください。」とのことでした。

 早速、同席していた姉(母からすると娘、近くで暮らしています)と相談して整形外科をどこにするか?決めないといけません。

姉「紹介していただいた整形外科もいいけれど、以前、骨粗鬆症の治療の時に通っていた病院の方が馴染みあっていいかもね。」

私「僕は、よくわからないので、従う。」

姉「なるべく通院の付き添いをするけど、さすがに、毎回は厳しいので、月に2~3回でいいから付き添いを代わってな。」

私「もちろん、できる限り協力します。ただ土曜日に予約をたくさん取ってもらえると助かります。」

 相談というより、姉に言われるがまま打ち合わせを済ませました。「息子より娘」なんてよく言われますが、この時ばかりは「男は役立たず」と実感させられました。

リハビリの付き添い

 母の送り迎えがてらですが、整形外科医院にゆくのは今回が初めてで若干戸惑っていると、逆に母の方が勝手知った感じで、自分でサッサと受付を済ませてリハビリルームの中へ入ってゆきました。まるで自分が連れられている感じで後についてゆくと、結構広いスペースにたくさんのリハビリ機器がずらりと並んでいます。指定された機器でのケアを一通り済ませて最後に理学療法士さんにケアしていただいたのですが、骨折した右ひじだけではなく足腰含めた全身の運動機能チェックやマッサージまでしてもらえることに感心しました。さらに

 「特に右ひざと股関節の動きが悪くなっています。高齢の方は仕方がないですが前屈はつらいかもしれませんね。今日ちょっと重点的にマッサージしておきます。」としっかり解説もありました。

 恥ずかしながら、これまで「理学療法士」のことはほとんど解っていませんでしたが「有名なアスリートのトレーナーの多くは理学療法士だという話はよく聞くし、実際、今日、スポーツ選手のような若い方も結構いらして治療を受けておられたのも、おそらく理学療法士さんが目当てなのだろう。本当に頼りにされているのだな。母をよろしくお願いします。」と頭の下がる思いでした。

いろいろな自助具との出会い

 リハビリの帰り「前屈はつらい」という一言が妙に気になって、ふと頭に浮かんだのは「前屈ができないから、ひょっとして靴のファスナーも閉められなかったのではないだろうか?だとしたら、それが原因で足のホールドが弱く、ぐらつきがあって転倒したのかもしれない?」ということでした。

 早速、車から母を下す際、足元を確認すると、靴のファスナーは案の定“全開状態”になっていました。母に

 「靴のファスナーを閉めた方がええよ。」というと

 「わかってるんやけど、この靴のファスナーが硬くて閉められへん。」と返事があったので

 「本当は前屈がしにくくてファスナーが閉められない」と容易に察しがつきました。しかし「では、どうしたらよいか?」というアイデアはなかなか浮かびません。

 「しょうがない、また職場の相談員さんに相談してみるか?」と安易に頼ってしまう自分を自嘲しながらも「何とかなるやろう」と不思議に楽観的な気分で帰宅しました。

 それから数日後の出勤時、展示場の入口正面カウンターに置かれていた「やさしいかいご」という当センターの情報誌が目に留まりました。丁度その頃は2024新春号が発刊されたばかりで「自助具を活用して快適な生活!」という特集が組まれていたのです。何かヒントがあるかもしれないとピン💡ときて、早速、手に取ってページをめくってみると、まさに“ビンゴ!”の連続でした。その時の私の感激は大体以下のような感じです。

1.まず初めは ★ リーチャー付き長柄靴べら ★

 「これなら、ひとりで靴のチャックの開け閉めが出来そう。それに100均の販売アイテムで自作できるかもしれない?いきなり目的の物が見つかってよかった。」

2.次に ◆ 使っていいね!キャップオープナー ◆ 

 「これも、ひとりでビール缶を空けられる。早々に購入しよう。(最近、さすがにノンアルコールタイプに切り替わりました。)」

3.三つめは ★ 足指の保持具と足置き傾斜台 ★

 「足の爪が伸び放題になっていたのは、これも前屈が出来ないのが原因かも?足の爪切りまでひとりでできてしまう。すごい!」

 ★★ 「やさしいかいご2024 新春 Vol.51」はこちら

 ★★★「やさしいかいご」バックナンバーはこちら

もちろん実際に使いました

 結局、3つとも入手(購入or製作)することができ、それぞれ現在大活躍中で母にとっての必須アイテムになっています。同時に私も大助かりです。ただ使い方や仕様は少しアレンジさせてもらっていますので、現在の主な使用者(おそらく将来、私も使用者になると思いますが)である母の反応と併せてご紹介します。

 ★ リーチャー付き長柄 ★ 

 リーチャーの代わりに「S字フック」、長柄靴べらの代わりに「ミニつっぱり棒」、靴のファスナーにつける「リング」の3点を100均ショップで購入(税込330円)し自作しました。

 靴べらの機能は付けられませんでしたが「楽に靴が履けるし、脱げるようになった。」と大変、喜んでいます。靴の脱着時にちょっと腰掛けられる小さな椅子を置いたのも良かったのかなと思います。

 ※椅子に腰かけると、案外、楽に前屈ができるようで、現在は当初の「つっぱり棒」から短め(25㎝ 程度)の「積み立て家具のポール」に変わっています。短い方が取り扱いが簡単なようです。

 ◆ 使っていいね!キャップオープナー ◆

 最初こそ缶を開ける時に少し苦戦していましたが、2~3日で慣れて使いこなせるようになりました。今ではペットボトルのキャップも含めてフル活用しています。

母「これが無かったら、もうビール辞めてたかもしれん。ホンマにあって良かったわ。」

私(心中)「ならいっそのことビールは辞めたらええのに。今、何歳やと思ってるんやろ?」

母「ただ毎日飲むのも、身体にええことないかもしれんな?でもビールは飲みたいしなあ…」

私「そやったら、いっぺん、このノンアルコールビール飲んでみたら?」

母「ノンアルコールなんてと馬鹿にしとったけど結構いけるな。これに切り替えよかな。」

 何がきっかけになるか分からないものです。食習慣の是正にも繋がりました。

 ★ 足指の保持具と足置き傾斜台 ★

 実は最近一番のお気に入りが、この「足置き傾斜台」です。「足指の保持具」は先に柔らかい素材のカバーが着いた市販のトングを購入し、家に持ち帰って使い方を説明したところ、すぐにベッドの縁に腰掛けて傾斜台を使って爪切りをしだしました。

母「いままで、足の爪まで手が届かへんかったけど、この台は斜めになってるから手が届く。これで足の爪切りできるわ。これはええな。ところで、これ何処で見つけてきたん?」

私「…」息子がどういうところで勤めているのか、未だに理解できていない模様…です。 

 いずれにしても、大変、喜んでくれて何よりでした。トングのほうは少し使いこなせていない様でしたが、傾斜台だけで十分に足の爪切りができていましたので、そのまま様子を伺っていました。

 そして数カ月後、次は展示場を入ってすぐ右手に展示されていた「充電式電動爪切」というコンパクトで丸い形の器具が目に留まりました。元々美容目的で開発されたもののようですが、爪を“切る”のではなく“削る”タイプですので、介護用/高齢者用としても安心して使えそうです。早速ネットで購入し母に薦めると、あっという間に従来型爪切りにとって代わりました。今では「傾斜台」&「電動爪切」が“自助具の最強ペア!”として母の美容ライフ!?を強力にサポートしてくれています。

■■■「自助具工房」のページはこちら

骨折からの復活⁉

 「自分」を助ける道具ということで“自助具”と書きますが、「自立」を助けるという意味合いも大きいと思います。(私は周りの人たちの助けにもなっていると本当に実感できました。)

 右ひじを骨折したときは、さすがに落ち込みがひどく、このまま引きこもってしまうのではないかと心配しましたが、自助具を通じて「自分でビールの缶が開けられる」「自分で靴のファスナーの開け閉めができる」「自分で足の爪を切ることができる」など地道に“小さな自立体験”を積み重ねたことで「私もまだできる!」と少し気力が戻ってきたような気がします。この点は90歳を回ったのに「オカンも大したもんやな!」と身内ながらに感心します。

 それを裏付けるように、ドクターから「いくら治療しても現状維持できれば御の字なので、気長に頑張ってください。」と言われていた骨粗鬆症の数値が改善して、リハビリの通院期間が半分で済んだということもありました。

 まさに「病は気から」を地で行っているようです。

健康寿命100歳!への挑戦

 ただ、さすがに最近は外出(買い物)や夕食の支度の頻度は徐々に減ってきています。それでも簡単な家事や入浴、排泄は自分でできていますので、この状態は十分“健康寿命”といえるのではないでしょうか。ともあれ、ここまで来たら是非「健康寿命100歳」を目指してほしいところです。

 「あんたが頼りないから、私がしっかりせんとしゃーないやろ!」と切り返されるに決まっていますので、本人には言ってませんが、私が頼りないふり(ふりをする必要がないかもしれませんが)をしながらでも母の生きる気力の芽を摘まないよう、これからも自分なりのサポートを続けてゆきたいと思います。